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これは、私が皆さんにお話しする科学に直接関連する唯一のことで、この講演を聴きに来られている科学者でない方々だけを対象にしています。従来法による育種では、何が起こっているのかが解明されれば(RR8)、研究室で従来法による育種を行うことが出来ることが分かりました。ではやってみましょう。あなたは良好な品種を得て、売るとします。売りながら取り組むわけです。しかし、以前のものよりもう少し背が高く、穀粒の収穫高がもう少し良くなってほしい場合、あなたならどうしますか?私たちがその時点で栽培している品種に欠けていて、それがほしいという性質を持つ野生品種、これと交配させます。交配させた後の次世代は、エリート品種(スライド上の白いもの)と野生品種(スライド上の黄色い遺伝子)と半分ずつの遺伝子を受け継いでいます。ここであなたがほしい遺伝子を持つものを選べば、ほしい性質が得られます。しかし、ほしくないその他多くの遺伝子も一緒に得る場合があります。それではどうすればよいでしょう。これらのハイブリッドを継続的にエリート品種と戻し交配させ、最終的に希望する品種を得るまでもともと持っていたエリート品種の遺伝子セットをどんどん追加していきますか(何が起こっているの、大丈夫!)。これに加えて、生育そのものには影響しないものの、それが何のためにあるのかわからない特性を多く取り込んでいます。したがって、伝統的な育種で得られるものをみると、いくつかは分かっているが、分からないものが数多く含まれていることを認識しなければなりません。私は、伝統的な育種によりもたらされる結果についてお話ししています。

 

 スライドの右側に、マルク・フォン・モンタギューが、細菌が植物にDNAを移入できることを発見した方法について示します。彼はアグロバクテリウムと呼ばれるものを研究しました。その細菌は小さなDNA断片(プラスミドと呼ばれる)を内包しており、このアグロバクテリウムが生育したい植物細胞内への移入方法を得ていました。マークは、このプラスミドが自然に移入を行うのであれば、さらにそのプラスミド上にある遺伝子とともに移入させるなら、おそらく対象とする植物に移入したい遺伝子をプラスミド上に加え、アグロバクテリウムを用いてそのプラスミドを植物へ移入させることが出来るだろう、ということをよく理解していました。彼はこれをやってみました。そしてそれは本当にうまく働きました。これが現在GMO(遺伝子組み換え生物)と呼ばれるものの基礎でした。これは何ら不自然ではなく、自然が常に行なっていることです。これらの植物のゲノムの塩基配列決定を行う際に、これまで知らなかったあらゆる種類の遺伝子がゲノム中に拾い上げられていることが認められています。これは常に自然界で起こっていることです。しかしながら、グリーンピースは、何であるか分かっているひとつの遺伝子を、植物に移入することは非常に危険であるという、生得的危険性について議論するでしょう。たくさんの遺伝子を用いて、それらを混ぜ合わせて、そして最終的に大丈夫、問題はありません。なぜなら、長い間私たちはこうしてきた訳で、この方法による植物が全て安全かそうでないかについて、実際に調べたことはなかったのですから。